「さわりたい」
その言葉にフランスは動きを止めた。暇だったので仕事ついでにからかおうと訪ねた相手をなんやかんやで寝室に連れ出す。文句を言いつつ着いてくることは分かっていたので、適当にベッドに押し込んで上に押しかかった。既に夜は遅く、仕事はしていなかったようだが、まさかと思って相手の唇に噛み付いて納得。こいつ酔ってる。
酒に強いイメージのあるドイツ人、普段からビールを飲んではいるものの、酔ったところなど見たこと無いのでザルだと思っていたが、今日はどうしたことだろう。そういえば寝室へと連れ出す間の小言が少なかったような気もする。こうなるまでビール何本空けたんだ?まさか樽とか言うなよ。
酒の力は素晴らしい。一見変わらずに見えるコイツの何かを奪う効果すらあるらしい。珍しい言葉に手を止めるフランスに、ドイツはおずおずと手を伸ばす。

髪を触るのが好きだ。
こいつ。
髪に良く触れる無骨な手。てっきり何かのマニュアル本に書いてあったことを実践しているだけかと思っていた。髪に触れるのは親しいコミュニケーションの代表的なものの一つだ。だがどうやらこの様子だと単にドイツの好みの問題のようである。
(今度から中々触らせてやらないようにしよう)
無言でふてくされるドイツを見るのは楽しそうだ。この男をからかうのはいつだって楽しい。
フランスの頬を過ぎ、頭の後に回すように指が髪を絡め取る。そうしたいと素直に言えたから、今は触らせてやってもいい。
普段は真面目な男の欲望を無理矢理引きずり出して本人に見せつけてやるのがひどく楽しい。明日ちゃんとこいつは覚えているかな。人の髪に指を絡めながらもなお不服そうな酔っ払い。何が不満なのか言ってごらん。その希望をお兄さんが聞いてあげないことも無い。
何せ真に酔っ払ったこいつは面白い。そんなことを発見して、俺は今とても気分が良いんだ。
絡める指を無視してどっと距離をつめる。酔っ払いとベッドはひどく相性が良い。どこかいつもよりぼんやりと眠気を伴った相手の瞳を身近で見ると、さらに愉快な気持ちになって、相手の口の中に押し入る。いつもは真面目に応えようと動く舌の動きがひどく鈍い。いつもより熱い舌にフランスは加虐心が掻きたてられた気がした。
(欲しがらないとやらないよ)
流されたふりなんかしないで、たまにはそのまま欲しがってみろよ。どうせ始めたらがっつくくせに。
(お兄さんは基本的に気持のいいことなら付き合ってやるからさ)
ぐうぜん、明日は俺は休みだしね。



I love you like a dog.
09.10.12
タイトル by 『is』さま